研究概要 |
本研究は、消費電力の少ない野外観測用の高感度磁力計を開発し、活火山の火口近傍に於ける地磁気変化を観測して地下の熱の推移と火山活動の関連を考察しようとした。平成8年度は、特に火山活動の推移を把握することを目的とした高感度のフラックスゲート磁力計磁力計の開発に努めた。開発された機器の温度安定度は極めて良好とは言えないので、地中約2m深さに埋設して気温の変動を避ける形で、阿蘇火山中岳に第一火口の南西部に設置した。センサー部には温度計を組み込んで、観測機器近傍の地熱変化に関わる見かけの地磁気変化を除去する方式とした。開発装置の特性は、感度100nT/Volt、分解能1pT(ピコテスラ-)、温度安定性1nT/℃、計測間隔1分、記録容量30000データ、消費電力12V,20mAである。機器の完成が冬季になり、阿蘇火山の表土が凍結したため、現場に於けるデータ取得は平成9年3月にずれ込んだが、阿蘇中岳火口の225°および315°の方向に設置して観測を開始した。平成9年度は特に連続記録の取得に主眼をおいたが、電力供給源としての太陽電池の能力不足により、しばしば欠測が生じたり、開発した磁力計の動作不安定が露見したりした。地磁気偏角観測を行った平成8〜9年度における阿蘇火口の活動状況は概ね静穏であり、一別して認識しうるほどの火山活動に関わる地磁気変化は観測されていない。火口約7km西に位置する京都大学理学部火山研究センターで定常的に観測されている地磁気変化との差分を求めるべく現在も解析を継続中である。開発機器は今後も改良を重ね、阿蘇の火口近傍で運用を検討しており、従来から観測されている地磁気全磁力の観測からは得られない新しい情報がえられるものと期待している。
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