学習院大学の6-8型マルチアンビル超高圧発生装置を用いて、約15GPaの圧力において超高圧下での金属鉄と珪酸塩鉱物の反応実験を行ない、酸素と珪素が金属鉄中へどの程度溶解するかを調べた。2000℃以上の温度では、金属鉄及び珪酸塩のどちらも完全に融解していた。実験後に急冷して回収した試料中の金属鉄の組織を観察したところ、樹脂状結晶が成長している部分と、泡のような球状の組織が存在している部分があった。この樹脂状結晶と球状組織は、電子線マイクロアナライザーを用いて組成分析を行った結果、多量の酸素が検出され、ほぼFeOに近い組成を持っていることがわかった。一方、珪素については、ごく少量だけ検出されるにとどまった。得られた試料を二次元的に組成分析を行い、補助金により購入したパーソナルコンピュータを用いて統計的に解析を行ったところ、15GPaの超高圧下で融解した金属鉄中の酸素溶解量は、5〜10重量%程度と見積もられた。一方、珪素については最大で1重量%程度と考えられる。現在行っている実験条件は、比較的酸素分圧が高い状態であるため、今後は酸素分圧の低い条件下での酸素、珪素の金属鉄中への溶解度を測定する予定である。また、回収した金属鉄中に見られるFeOの樹脂状結晶は、融解した金属鉄を急冷する段階で、金属鉄中の酸素が過飽和状態になり、FeOとして結晶化したと考えられるが、球状のFeOは元々融解した金属鉄とは不混和状態にあった可能性があり、この場合には球状FeOは融解した金属鉄とは別の相として扱うべきであり、今後さらに検討する必要がある。
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