研究概要 |
平成8〜9年度における本研究の目的は、北海道の代表的な閉鎖性汽水湖である北海道の春採湖と網走湖を対象として、湖の下層にみられる無酸素塩水層(死水層)の形成・振動・流動の機構を野外観測に基づくデータ解析から明らかにすることである。死水層の振動・流動に関する観測期間は、春採湖は平成8年7月〜平成9年4月、網走湖は平成9年6月〜10月であった。両湖最深点の無酸素層中央で流速・水温、最深点を含む湖長軸上3点の塩分躍層で電導度・水温,同3点の淡水層中央と塩水層中央で水温の連続測定をそれぞれ行った。また、釧路市と網走開発建設部より、風・湖水位や海水溯上する河川の塩分・水温と流水河川の水位及び潮位について時系列データを入手し、これを含めた統合的なデータ解析を行った。他方、随時現場での試水収集と湖底泥の採取及び水温・塩分・DOの鉛直プロファイルを得た。結果として、次のことが明らかとなった。 1)海水の進入条件の違い:網走と釧路での潮位変動は前者では日周潮、後者では日周潮と半日周潮が卓越する。これに対する海水進入は、春採湖では大潮のなかでも高位のときにのみ起こり、網走湖では毎日の日周潮の高位時に認められる。但し、両湖の下層には常に無酸素層が存在し、潮淡境界の深度も大きく変化しないことから、その進入量は湖盆容積に比べ大きくないことがわかる。 2)死水層の振動・流動特性:網走湖・春採湖では年間を通し、晴天時には海陸風循環が卓越する。これに対する死水層の内部静振は、春採湖では余り顕著ではない。この理由として、湖盆の陸側半分は水深1m程度の浅水域で塩水層は存在せず、このため静振以前の吹き寄せが風波によるエネルギー散逸によって不十分であることが上げられる。網走湖では夏期に相対的に海風(北風)の連吹時間が長い。この風系に対応して、死水の挙動は,西北西〜北西方向で〜5cm/sの流速をもち、その他海陸風循環時には西〜北西方向で〜7cm/sで日変動した。より短周期には網走湖の内部静振が認められ、これは塩分躍層での塩分変動にも現れた。
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