これまで、熱帯海洋から中高緯度大気への影響は、様々な形で研究されてきたが、逆に、中高緯度の水がsubductionによって熱帯海洋へ運ばれることにより、中高緯度の大気の影響が熱帯海洋に及び可能性がある.本研究ではこの点に着目し、中高緯度大気変動、特に10年スケールでの変動が知られる偏西風の変動の影響がsubduction過程によって中、低緯度の海洋内部へ伝わる様相を明らかにすることを目的とした.そのため、北太平洋を理想化された海洋モデルを、東西風で駆動し、その際、偏西風を10年スケール(10年)とENSOスケール(3年)の周期で振動させ、海洋の応答の周波数依存性を調べた. 風が強くなることになり、高緯度からのエクマン輸送の増大により海面水温が下がり、混合層が発達し低渦位の水塊が形成される。この水塊は、等密度面が海面と交わる線と混合層フロントの交差点付近でからsubductされ海洋中を南西方向へ伝わり、西岸境界流に到達する。風が強くなることによるspin upにより水温躍層は深くなるが、この低渦位水の為、亜表層の等密度面は上昇する。この海水の循環の時間スケールは10年程度であり、10年スケールの振動には追随できるのに対し、3年スケールでは追随出来ない。また、混合層の深さも時間スケールが短いと十分に応答出来ず、変動が小さくなる。この為、ENSOスケールの振動に対しては中、低緯度で顕著な変動が現れないのに対し、10年スケールの振動に対しては中、低緯度の広い範囲に変動が現れることが示された。 これはsubductionが10年スケールの変動で、重要な役割を果たしている可能性を示唆するものである。
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