海氷の季節変化を調べるため、薄氷域、定着氷域、季節海氷域などの代表観測域(キ-エリア)を設定し、キ-エリアの衛星観測データを抽出して時系列データを作成している。キ-エリアとして選んだのは、オホーツク海北部のオホーツク市の沖とサハリン湾(サハリンの北)、サハリン東海岸の沖および南極昭和基地の沖である。これらの地域は、それぞれ薄氷や定着氷、早い結氷など特徴的な季節変化を示す。 オホーツク海については代表的な多氷年と少氷年を選び、毎日の海氷/薄氷マップを作成し、詳細な観察を行った。サハリン湾やサハリンに沿った風下域では、季節風の変動とともに薄氷の拡大縮小も見いだせる。しかし、陸地沿いでなく沖にも広大な薄氷域が検出されることから、その成因や海氷域内部の不連続状態などあらたな注意項目が指摘される。 北極圏については、ラプテフ海に現れる沿岸ポリニアに注目し、沿岸ポリニアと薄氷域の出現に注目して解析を進めている。北極海もオホーツク海も定着氷化した海氷は、多年氷によく似たマイクロ波シグナルとなるため、季節変化を調べていく際に、海氷成長と定着氷化する時期について調べることが重要であることがわかった。 衛星データを利用して、最近20年間程度の海氷の変動を解析する目的で、Nimbus-7とDMSPという異なる衛星によるマイクロ波データ(SMMRとSSM/I)の比較を行った。特に海氷の季節変化を調べる際に重要な結氷初期や急速な結氷域の拡大につながる薄氷域の検出法について比較した。Nimbus-7 SMMRの方が観測バンド数、空間分解能も優れているが、サイドロープの影響や水平/垂直偏波の分離に問題がある。薄氷検出について、新たな係数などを検討した。これにより、海氷分布だけでなく薄氷域等についても長期変動の検討を行う。
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