研究概要 |
黒潮が輸送する主要な水塊の平均的空間構造とその時間変動の解明をめざし,平成8年度には次のとおり研究を実施した。 1.気象庁による黒潮域の海洋観測定線のうち,15〜20年以上にわたり4季節ごとの観測が維持されてきた7つの定線のデータを日本海洋データセンターのデータベースから抽出し,データの時間的空間的分布の確認および品質管理を行った。データの時間・空間的格子化の準備を完了した。 2.東大海洋研所属の研究船白鳳丸により同研究所海洋物理部門と共同で,台湾付近から本州東方までの黒潮域集中観測を10月17日〜11月10日に実施した。CTD・採水および音響ドップラー流速プロファイラー(ADCP)による空間解像度の高い黒潮断面データを10測線分取得し,データの品質管理をおおむね完了した。 3.1の定線データを含む利用可能な全ての既存海洋観測データを用いて,主要水塊を代表するポテンシャル密度面上の水温,塩分,酸素,渦位の気候値マップを作成した。平均化を等密度面上で行うことにより,黒潮域の水塊分布の平均的特徴を的確に表現することに成功した。興味深い特徴の例として,黒潮再循環が東方から運んできた比較的低塩分の北太平洋中層水(NPIW)が九州〜四国沖で黒潮に流入している等が挙げられる。 平成9年度には,3の気候値マップを参照しつつ,1および2のデータを用いて主要水塊ごとの流量を評価し,輸送水塊の平均的空間構造を定量的に示す。また,輸送水塊の年サイクルから数年スケールまでの時間変動性を調べる。
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