研究概要 |
昨年度に引き続き、湖底高濁度層および水温躍層附近における懸濁物質の実態と循環機構を解明するために、主として以下のような調査を実施した。 1)定期観測:琵琶湖北湖の南部水域、特に野洲川河ロ沖に焦点を当てて、毎月1回、水温・電導度・濁度・クロロフィルaの鉛直分布、透明度、pH、風向風速などの測定を行った。また、顕著な濁りが観測された水域では、湖水を採取し、SS濃度と強熱減量を求めるとともに、蛍光X線による懸濁物の化学組成分析を行なった 2)流況観測:自記流向流速水質計を北湖南部の数点と野洲川河口に係留し,流速,水温,濁度の連続観測を実施した。また、梅雨期には野洲川河口沖でADCPによる流向・流速の曳航観測を行った。 3)集中観測:7月末の台風に伴う豪雨の影響を見るために、計4日間にわたる総合的な観測を行った。この期間中には、湖の3カ所にセディメントトラップを設置し、沈降物のSS濃度、強熱減量、化学組成、および粒径分布を測定した。 4)湖水と河川水の水温連続観測:琵琶湖と野洲川下流に自記水温計を設置し、河川水と湖水の温度を連続的に測定し、河川水の流入パターンの変化を調べた。 以上の観測によって得られたデータから、河川水の流入様式は河川水と湖水の水温差によって大きく変化し、春季の日中には湖の表層に拡がり、夜間には湖底に潜る。夏季から秋季には河川水が水温躍層に貫入するが、河川流量や河川水温の変化に伴って、貫入する深さも微妙に変化する。湖底高濁度層の主成分は分解過程にある植物プランクトンであるが、水温躍層に貫入した懸濁物がゆっくりと沈降することによって湖底高濁度層が一時的に強化される。
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