鹿児島湾-名瀬間のフェリーによる表面水温(SST)の記録を使用してトカラ海峡の黒潮前線フロント移動と湾内暖水流入について調べた。その結果、流軸が南にあるとき(屋久島と奄美大島の中間位)、大隅海峡では等温線が東西方向にのびているが、流軸が北上すると黒潮前線フロントは佐多岬付近に接近し、鹿児島湾の東側から湾内に流入している急潮的イベントが見いだされた。イベントによる流入量を流速測定の結果と照らし合わせて計算すると一日あたり16.2億トンであり、イベント以外の流入量は7.7億トンで倍以上の差があることが判明した。 過去に行った湾口断面の測流結果から断面流量を計算した。これによると、一日の流入量が最低では1億トンから最高50億トン近い日もあり、非常に大きい事が判った。また、季節変化では冬季は上層流入、下層流出、が57%で最も多く、夏季は上層流出、下層流入が55%であったが時として上層と下層で流入、中層で流出の3層構造の日があった。こような時には流入・流出量が非常に大きいこともわかった。 衛星データ(NOAA)を入手して、それから求めた湾内水温水平分布と定期船のSSTの変動を比較した結果、NOAAで暖水流入が見られる時には、定期船のSSTが湾内で変化が大きく特に湾口付近で急昇している。しかし、暖水流入が見られないときには湾口での急昇は見られず、また湾内の水温変化も小さいことが判明した。 今後に研究を継続するための1つとして湾を横断する2系統のフェリーに水温計を設置し、測定を開始した。今の所はっきりしたことは言えないが暖水流入時は横断面全体で昇温するが園割合は東側が大きいことが判明した。
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