研究概要 |
現在までにQ/L画像の写真が整理できたものは1989年2月から1993年1月までの分(P.1データとする)である。さらに,1993年2月から1994年11月までの分(P.2データとする)は現在モザイク化の作業を行っている。従って,目下のところ,P.1データについての解析を進めている。以下にその進行状況及び研究成果の一部を簡単に述べる。 これらの写真は,今後の極域海洋研究に有効に利用できるデータセットとなるよう,系統的に整理(各種現象の季節変動,緯度方向の氷状変動,パス毎の時系列変動など)を進めている。写真をモザイク化してファイリングしていくとともに,各種の研究用途に利用できるように,ネガをパソコンでスキャニングしてMOに保存中である。ただし,スキャニングには時間を要するため,その進行状況は遅いのが実状である。次に,P.1データに基づくこれまでの研究成果を簡単に述べる。 今のところ,観測された沿岸ポリニヤとIce Bandsを中心に調べている。沿岸ポリニヤは,NOAA等でも頻繁に観測されているが,MESSRを利用することによって,その内部の現象を知ることができることが分かった。特に,沿岸ポリニヤは海氷生産工場として機能しており,誕生したNew IceやFrazil iceは海洋や大気の流れによってストリーマ-を形成し,移流・拡散している過程が観測されており,海氷の生成過程を解明する上で重要な知見を得ている。 Ice Bantsは,MESSR画像によって,南極でも融解期に限らず時空間的に頻繁に形成される現象であることが分かった。また,バンドのスケールは場所や海象・気象の影響によって異なることは当然であるが,基本的には季節変動があることが示唆される。また,今まで主に観測・研究されてきたベーリング海などのIce Bandsとはその形成範囲の広さに大きな違いがあり,南極では緯度方向に数100kmの範囲で形成されることが分かった。
|