南極の昭和基地では、昭和基地を中心とする範囲(東南極大陸からその周辺を囲む海氷・海洋域)について、1989年から1996年にかけてMOS-1/1bの受信が行われた。この間の総受信パス数は1447であった。本研究では、1989年2月〜1993年1月のクイックルック写真を利用した。この間に受信されたパス数は669で、海氷を検知しているシーン数は約2300で、受信シーン数の約6%に当たる。 本研究は、こうして取得されたMOS-1/1b・MESSR画像(分解能:50m)を利用して、画像に見られたいくつかの特徴的な海氷現象に注目し、その季節変動や空間分布特性について調べた。 その結果、南極海氷のメソないしサブメソスケールの特徴として、以下の点が明らかになった。 (1)Ice Bandsはどの季節においても見られ、氷縁付近から氷野内部へ数100kmの範囲に及んで形成されている場合がしばしば観測された。 (2)冬季から夏季に向かってIce Bandのスケールが小さくなっていた。 (3)沿岸ポリニヤ内ではFrazil iceないしNew iceが筋状に定着氷から沖へ流れている様子が観測された。 (4)筋状の流れの方向には、海洋の流れの場の影響が示唆された。 (5)ポリニヤ内に見られたFrazil iceないしNew iceの筋は、ラングミュアー循環のスケールより1-2オーダー大きく、Deep convectionを表出している可能性がある。 (6)融解期に見られる開水面は、毎年同じ位置に作られることが分かった。その形成要因の一つには海底地形の影響が考えられるが、確かなことはこれからの研究課題である。 (7)沿岸ポリニヤ内の氷盤の運動は基本的に海洋の流れを反映していると考えられる。また、定着氷側で比較的速い速度を持っていた。 (8)マラジョージナヤ基地沖には毎年同じ位置に同じ形で沿岸ポリニヤが形成されやすいことが分かった。
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