福島大学の境界層レーダーサイトに国立天文台のGPS受信機を設置し、夏期(7月)の2ヶ月にわたって、我が国最初のGPS水蒸気可降水量と風速ベクトルの鉛直分布の同時観測を行った。双方の観測は数分から数時間の時間スケールの水蒸気変動を検出するために1分間隔で実施した。 まず、夏期のデータから(冬期データはまだ解析中である)、GPS可降水量は実にめまぐるしく時間変動していることがわかった。これはある程度は予想していたことではあるが、その変動の程度は福島大学の境界層レーダーで捕らえるにははるかに高周波であった。しかし、種々のGPS解析の観点から検討を加えた結果、これらの変動が果たして真の現象かどうかはただちには判定しにくいことがわかった。 そこで、この可降水量変動が如何なる空間スケールを持つかを見るために、国土地理院GPS観測網のうち福島大学を中心とする半径60km程度内の観測点を数点選び、それらのGPSデータ解析も並行して進めた。その結果、これら数点のGPS変動にはほとんど同位相の共通した高周波変動が含まれていることが明らかとなった。そこで、これらの高周波変動が果たして真の水蒸気変動か否かを境界層レーダーで得られた風速ベクトルの鉛直分布から同定するための解析を急いでいる。 これらの観測と並行してGPS水蒸気可降水量とラジオゾンデデータによるそれとの比較解析も行った。その結果、前線の移動が明瞭でない夏期では、日変化や数時間程度の時間スケールの水蒸気変動が卓越するために、GPS可降水量とラジオゾンデによるそれとの一致はすこぶる悪いことが判明した。 以上のように水蒸気変動には捕らえどころのない高周波変動が実在しているようである。
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