研究課題/領域番号 |
08640552
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
内藤 勲夫 国立天文台, 地球回転研究系, 助教授 (90000174)
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研究分担者 |
渡辺 明 福島大学, 教育学部, 教授 (70114006)
日置 幸介 国立天文台, 地球回転研究系, 助教授 (30280564)
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キーワード | GPS / 水蒸気 / 大気遅延 / メソ気象 / 測地観測 / 天気予報 |
研究概要 |
GPS(全球測位システム)は地球上の任意の位置を1cmの精度で測るシステムである。近年の衛星軌道の精密化によって、GPS電波の大気による遅れ(大気遅延)もGPSで観測されるようになった。その結果、水蒸気による遅延の天項方向の成分に比例する可降水量もGPSで観測できるようになり、その気象学への利用に関する研究がGPS気象学である。本研究は我が国で初めてのGPS気象学に関する基礎研究である。 本研究では、まずはじめに、GPSで得られた可降水量をラジオゾンデ観測で評価し、GPSがラジオゾンデとほぼ同じ精度(2mm程度)で可降水量を捕らえていることを確認した。この精度は現在知られている宇宙からのマイクロ波によるリモートセンシングよりはるかに優れている。さらに、筑波においてGPS可降水量の高時間分解能の解析をほぼ1年間にわたって実施し、夏季に卓越する海風に伴う可降水量の局地的日変化などを世界で始めて捕らえることに成功した。 そこで、国土地理院の全国600点におけるGPS観測網の定常解析データから可降水量を取り出して、日本列島上空の可降水量の可視化を試みたところ、夏季における前線の通過に伴う可降水量の動態を鮮明に捕らえることに成功し、全世界の気象界を驚嘆させた。 しかしながら、GPS可降水量の捕獲にはいくつかの問題点も存在することが明らかにされた。その最大の問題は電波の地面からの反射によるノイズで、その可降水量推定に及ぼす大きさはおおよそ2mmにも達することが判明した。しかし、この問題はGPS気象学の将来には決定的な障害となるものではない。
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