研究概要 |
1.科学研究費購入物品及び既存装置を組み合わせ、火山性中性ナトリウムガスの光学観測装置の試作を実施した。同装置は、口径28cmのシュミットカセグレン鏡、赤道儀、ナトリウムガス用干渉フィルター(波長589.0, 589.6nm)及び冷却CCDカメラより成り、ガスの2次元連続イメージングが可能である。同装置による観測視野はイオの近傍約25木星半径以内の領域であり、同装置は広域のナトリウムガス発光(イオより数百木星半径の領域での発光)観測を進めるための予備装置としての役割を担っている。また、国立極地研究所にて装置の光学特性検定を実施した。 2.上記装置を用いて火山性中性ナトリウムガスの試験観測を実施した。試験観測は、宮城県西部の蔵王山中(標高約1700m)や県南の阿武隈山地内(同700m)を観測点(移動)とし、木星衝(平成8年7月初旬)後の平成8年8月〜9月に行った。観測によりイオ近傍で90KRayleighsに達するナトリウムガス発光現象の検出に成功した。発光はイオに対し南北非対称になっており、木星磁場及びプラズマ分布から予測される対称性を示す発光分布とは異なるものであった。この現象の確証には観測装置の光学的・機械的安定性の較正を今後つめる必要があるが、発光の非対称性はガスの放出がイオにおいて等方的でなかったことを示唆し、磁気圏への影響を考察する上で興味ある結果である。 3.光学観測装置の試作・検定及び試験観測を通じ、広域観測における微量なガスの発光を捉えるためにはより高感度の装置を用いることが不可欠であることが判明した。このため既存のCCDカメラヘッドの低雑音・超高感度での使用を可能とする制御装置を設備備品として新規購入した。現在、広域火山性ナトリウムガス観測用の光学システムの開発を進めており、平成9年度に広域観測による木星磁気圏プラズマ源分布の情報の取得を目指す。
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