1.イオ火山性ガス光学観測装置の開発・製作:口径28cmの反射赤道儀、狭帯域干渉フィルター、及び電子冷却式CCDカメラから成るイオ火山性ガス光学観測装置を開発・製作した。同装置は、イオ火山性ガス発光現象の観測を行う上で十分な10レーリー以下の検出感度を達成し、約40木星半径程度の広視野での中性ナトリウム(NaI)ガス及び硫黄イオン(SII)ガスの2次元分布のイメージングを可能とした。 2.観測概要:同装置を用いたイオ火山性ガスの観測を、宮城県西部の蔵王山及び豪州中央部のアリス・スプリングスで実施した。また、国立天文台岡山天体物理観測所にて、同機関の口径91cmの反射赤道儀を集光装置とした、より高空間分解能での観測もスポット的に実施した。以上の観測で、特に豪州の観測において、従来世界的に例のない、約二時間にわたる連夜の観測に成功し、木星近傍に拡がるガス分布の空間的・時間的変動に関するデータを取得した。 3.観測結果と新たに得られた知見:NaIガスについては、木星中心から20木星半径以上離れた領域においてガス分布に南北非対称が発見された。ガス放出過程のシミュレーション計算と観測結果の比較により、このガス分布は、従来提唱されてきた等方的な温度分布を持つプラズマによる電荷交換反応に基づくNaIガス放出過程では説明されないことが判明した。SIIガスについては、数日〜週程度の時間スケールで発光量が3倍程度変動することが確認された。これらの結果は、木星磁気圏の主なプラズマ源であるイオ火山性ガスの、未知の放出過程と特徴的な変動を解明する上で重要な発見である。
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