研究概要 |
南極域の大気環境の変動を示す指標として,昭和基地における1967年から1994年までの成層圏オゾン量の観測データの解析を行った。最も大きい年変化が見られるのはオゾンホールが見られる南極の春(10月)であるが,オゾンホールの継続的拡大傾向を直線で近似して経年変化を除去した上で太陽活動11年周期との関係を調べた.ここで,太陽活動の大きさを表す指数として,波長10.7cmにおける太陽電波放射強度を用いた.その結果最も有意な相関が見られたのは,30hPcレベルにおける成層圏風の準2年振動(QBO)が東向きのときであり,太陽活動が活発なときほどオゾン量が多いことが分かった.これに対応して同じ時期に成層圏の温度も上昇しているため,極域成層圏において低緯度帯からの大気循環がこの時期に活発になっていることが示唆された.今回解析は昭和基地の1地点についてのみについて行われたものであるが,今後は南極における他の観測基地における観測データや,人工衛星による全球的観測データとの比較を行い,太陽活動が南極域大気環境に影響を与えるメカニズムの解明を目指す.
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