本年度は、石狩油田地域の厚田原油、茨戸原油と周辺地域の泥質岩類(当別層、望来層、盤ノ沢層、厚田層、発足層、奔須部都層)について地球化学分析を行い、同地域に産する原油の根源岩を特定した。厚田・茨戸原油は高いプリスタン/ファイタン比(2以上)を持ち、その根源岩は比較的酸化的な環境下で形成されたことを示している。また、海成プランクトンに由来するコレスタンに乏しく、バクテリアや陸上植物、菌類に由来するトリテルパン類に富んでいることから、根源岩は比較的陸源物質の寄与を受けやすい堆積環境で形成されたことを示している。また、続成作用の過程でジアステラン類が顕著に形成されていることから、根源岩はジアステラン形成に際して触媒として機能する粘土鉱物類に富んでいることが予想される。以上のことと周辺堆積岩類の熟成度から、石狩油田地域の石油根源岩は新第三紀中新世の厚田層下部の砕屑性泥質岩であるものと考えることができる。 本年度は、日高帯西部の夕張山地周辺において古第三紀泥質岩(美唄層ほか、古第三紀石灰も含む)の試料採取を行った。開放系での熱分解実験からこれらの試料の石油生成ポテンシャルを既に測定した。これら古第三紀泥質岩の一部は優秀な石油根源岩になり得ることを示している。現在、これらの試料から有機溶媒によるビチュメンの抽出を進めている。また、近年発見された勇払原油の有機地球化学的特徴を明らかにし、勇払原油の石油根源岩を特定する作業も進めている。平成8年度に購入した高速液体クロマトグラフ用ポンプと紫外可視光検出器により迅速前処理法(中圧分取液体クロマトグラフィー)を確立させつつある。この前処理法を積極的に活用することにより、平成9年度に本研究を完結させる見通しが充分にある。
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