研究概要 |
平成9年度は,福島県中通地方・阿武隈山地を中心にして,87の井戸から水試料を採取して水質を分析するとともに,平成8年度の分析試料及び福島県水質年報も加えて,福島県下の有機塩素系溶剤による汚染の状況を水文地質学的見地から検討した.それによれば,福島県内には170地区をこす汚染地区があり,そのうち,国の水質基準値を超過する汚染地区が約70地区存在する.福島市・須賀川市・保原町には,その100〜1000倍に達する汚染地区があり,汚染水で飼育された金魚が,腫瘍の発生や背骨の異変によって死亡した地区さえあった.大規模な汚染は,第四紀の砂礫層によって構成さる地域に発生している. 福島県は水質汚濁防止法に基づき,地下水質を調査して結果を公表し,一部の汚染事業者に対しては,事業場内において汚染土壌の除去及び汚染地下水の揚水による浄化を指導している.しかし,水質年報からは,汚染が地理的,水文地質学的にどこで発生しているのか判読できない.汚染地の浄化をなぜ実施するのか,その目標をどこに置いているのかも明らかでない. 汚染地の浄化は,汚染地内の住民の健康,水質源の保全,オゾン層の破壊や地球温暖化の防止,土地所有権の侵害の排除あるいは防止等の観点から,目標を定めて,事業期間や事業の効率等を考慮して実施されることが肝要である. 福島県内の推定される汚染原因は,洗濯業・電機機械器具製造業・精密機械器具製造業などにあり,多くは零細企業である.このため,水質汚濁防止法に基づく浄化命令が出たとしても,その実施は経費負担の面から実効性を期待できない.国や自治体による浄化対策費の創出が求められる.
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