研究概要 |
福島県内には,判明しただけで,170をこす有機塩素系溶剤による汚染地区があり,そのうち,国の水質基準値を超過する汚染地区が約70存在する.福島市・須賀川市・保原町には,水質基準値の100〜1000倍に達する汚染地区があり,汚染水で飼育された金魚が,腫瘍の発生や背骨の異変によって死亡した地区さえある.推定される汚染の原因者は,洗濯業・電機機械器具製造業・精密機械器具製造業などであり,零細企業である.汚染源はほとんど事業場内にある可能性が高いものの,敷地外の用排水路に高濃度のテトラクロロエチレンを放出して,広域に汚染をもたらしている例も認められた.汚染面積が広い地区は,すべて第四紀の砂礫層によって構成されている. 福島県は水質汚濁防止に基づき,地下水質を調査して結果を公表し,一部の汚染事業者に対しては,事業場内において汚染土壌の除去及び地下水の揚水による浄化を指導している.水質年報の内容からは,汚染が地理的,水文地質学的にどこで発生しているのか判読できない.汚染地の浄化をなぜ実施するのか,その目標をどこに置いているのかも明らかでない. 汚染地の浄化は,汚染地内の住民の健康,水資源の保全,オゾン層の破壊や地球温暖化の防止,土地所有権の侵害の排除あるいは防止等の観点から,目標を定めて,事業期間や事業の効率等を考慮して実施されることが肝要である. 福島県内の汚染原因者は,多くが零細業者であると推定されることから,水質汚濁防止法に基づく浄化命令が出たとしても,その実施は経費負担の面から実効性を期待できない.国や自治体による浄化対策費の創出が必要である.
|