研究概要 |
1.西南日本内帯(美濃帯・丹波帯・超丹波帯)や東北日本(北上帯)で野外調査を行い,これまでに発見されているチャート中のイベント堆積物につき試料採取を行うと共に,あらたなイベント堆積物の探索につとめた.成果のひとつとして,岐阜県郡上郡八幡町の長良川流域で,チャート中に砕屑岩層が挟まれていることを確認した.このチャートの年代は,伴って産する岩石の種類や産状から二畳紀のものではないかと予想される. 2.チャート中の砕屑粒子のキャラクタリゼーションを行った.手法としては偏光顕微鏡観察・EPMAによる化学組成の測定・XGT元素マッピングなどを利用した.新たな発見としては,岐阜県加茂郡上麻生のチャート中に挟まれるイベント堆積物中に海緑石に似た化学組成を持つ砕屑粒子を発見したこと,岐阜県尾崎のチャート中に挟まれるイベント堆積物中にドロマイトなどの炭酸塩砕屑粒子を見いだしたこと,などがあげられる.遠洋性堆積物であるチャートの堆積場に,浅海成を示唆する砕屑粒子が見つかったことで,このイベント堆積物の起源について制約条件を与えることができた. 3.極東ロシアのシホテアリン山地には西南日本内帯とよく似た中生代付加体が広く分布する.これらの付加体のうちジュラ紀に形成されたサマルカ帯の三畳紀チャート中に産するイベント堆積物を詳細に検討した.その結果,この堆積物の組成・年代・産状・運搬機構は,西南日本内帯のジュラ紀付加帯中に産するイベント堆積物とよく似ていることが判明した.
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