研究概要 |
本研究の目的は,日本海の拡大期のテクトニクスを再検討することである.そのため古第三紀の拡大初期から中新世の終了時までの本州弧のテクトニクスを堆積物から検討した.下記の4項目について研究を行った. 1 小断層解析法の再検討 本研究が対象とする第三紀のテクトニクスを明らかにする上で,小断層解析は有用な手段である.房総半島であらたに小断層データを取得し,方法論の再検討をおこなった. 2 久万層群堆積期のテクトニズム 山陰・北陸地域と四万十帯の間では第三紀テクトニクスのデータが乏しい.そこで久万層群を再検討した.微化石年代とフィッショントラック年代が新たに得られ,同層群の大部分が下部中新統であることが判明した.また,従来曖昧にされていた久万層群と上位の石鎚層群とのあいだは傾斜不整合であり,久万層群が断層運動を伴ってできた堆積盆を埋積したものであることがわかった.小断層解析の新手法を適用した結果,久万層群および石鎚層群の堆積時に,それぞれ東西一軸圧縮,北北東-南南西三軸伸張応力が作用していたことが推定できた. 3 古地磁気によるブロック回転の研究 日本海拡大時に羽越地域には,東北本州弧主部とは反対の回転運動をしめす岩体がある.そこでまず同地域で高密度の古地磁気用サンプリングをおこない,時計まわりと反時計まわりをしめす岩体の分布を明らかにした.また,回転ブロック境界に大規模な右横ずれ断層帯を発見し,ブロック回転時に活動した断層の可能性が高いことが分かった.4 日本海拡大時における日本弧周辺のプレート運動 上記の知見と従来のデータを総合し,日本海拡大時のプレート運動を復元した.当時の日本弧は,いくつもの劇的事件を経験したが,海洋性リソフエアからなるマイクロプレートが前期中新世に太平洋プレートから分離し,それが15Maに西南日本弧下に沈み込んで消滅したと仮定すれば,それらの事件を合理的に説明できることを明らかにした.
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