研究概要 |
平成8年度は次の研究を行った.1)隠岐島後において,末期中新世の葛尾石英流紋岩類を供給した火道およびfeeder dikesにおける流紋岩とトラカイトマグマ間の機械的,組成的マグマ・ミキシング,ホストの流紋岩マグマの発泡と破砕化について詳細な岩石記載,化学組成分析,EPMAによる鉱物とガラスの組成分析を行い,その実態を明らかにした.この結果は平成9年3月の火山学会にて発表予定である.2)火砕流堆積物にしばしば含まれる炭化木片を用いて^<13>C/^<12>C比と炭化度から温度推定を試みた.まづ温度(200-700℃)と時間(15分から1月)を決めて木材を炭化させ,それらの^<13>C/^<12>C比とH/CとO/Cを求め,温度や炭化時間の依存性を求めた.結論的には^<13>C/^<12>C比は温度推定には適用できないが,炭化度は有効であることが判った.3)更新世のデイサイト火山である大江高山-青野火山群-国東半島の火山岩類の地質調査,岩石記載を行い,岩石学的諸特徴を比較検討した.その結果,山陰中央部から大江高山,青野火山群,国東半島をへて長崎県の多良岳にかけて,同じデイサイトでも化学組成の上で系統的な違いがあることが判った.デイサイト火山は火砕流を発生させる潜在的な能力を持っているが,激しい爆発を伴うものと伴わないものがあり,それらの化学組成上の相違を検討することが今後の課題である.
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