新第三紀の山陰-北陸区に属する北但層群村岡累層と瀬戸内区の地層である唐鐘累層のストーム堆積物を対象に調査研究を行なった。研究遂行途上で村岡累層の研究により多大な知見を得ることが見込まれたため、重点をそちらに置いた。唐鐘累層の本格的研究は次年度に回す。以下に村岡累層から得られた成果を記す。 村岡累層のストーム堆積物は、厚さ、粒度組成、内部堆積構造とも変化に富む。単層ごとの解析の結果、村岡累層のストーム堆積物に5つのタイプが識別された。これらは互いに明瞭に区別されるわけではなく、タイプAから順にタイプEへ連続するスペクトラムをなす。タイプA:振幅の大きなハンモッキー斜層理を示す、厚さ15〜40cmの極細粒〜細粒砂岩で、振幅成分の卓越する複合流から堆積したと考えられる。タイプB:振幅の小さい低角度のハンモッキー斜層理を示す、厚さ20cm程度までの極細粒砂岩。このタイプの砂岩は振動成分の小さな、直進性の強い複合流の堆積物とみなされる。タイプC:厚さ3〜15cmの極細粒砂岩〜シルト岩で緩やかにうねる平行葉理を示し、上部に非対称リップル葉理を伴う。このタイプはTb-d、Tbcタ-ビダイトに類似し、波浪による振動作用の影響が極めて弱かったことを示している。タイプD:厚さ2〜7cmの、非対称リップル葉理を示すシルト岩から弱い葉理を持つシルト質泥岩への級化層でTcdタ-ビダイトとみなされる。タイプE:弱い葉理をもつ厚さ3cm以下の級化シルト質泥岩で極めて弱い懸濁流からの細粒物質の沈積を示す。以上の諸特徴から、村岡累層のストーム堆積物が主として複合流の産物であること、特に直進成分の影響が強い状況下で形成されたことが想定される。また、タイプAからタイプEへと、より細粒化・薄層化するとともに振動成分の影響が弱くなる傾向がある。これはストーム波浪限界深度をはさんでの、ストーム堆積物の相変化を表わしていると考えられる。
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