琉球列島八重山諸島他の、サンゴ礁地域に発達する海底洞窟の六放サンゴに関する分類学的研究を行い、次の6属7種を同定した。Madracis sp.(新種)、Desmophyllum cristagalli Milne-Edwards and Haime、Polycyathus sp.(新種)、Pracyathus pruinosus Alcock、Dendrophyllis sp.(新種)、Dendrophyllia elegans Horst、Pectinidae科新属新種。 これらの特徴は以下の通りである。 1.洞窟産六放サンゴは、いずれも固着性で非造礁性である。1新属新種、3新種を含む極めて特異な群集である。従来日本列島近海から報告されている非造礁性サンゴとは、その群集組成が異なり、西太平洋から初めての種を含み、地中海や大西洋産に近い種も存在する。 2.Madracis属の新種は、小さい塊状の群体を形成し、他の枝状の種と異なっている。今回は、これまでの分類基準に従い形の違いから新種と同定したが、これは洞窟という隠性的環境に適応するため、枝状のサンゴ体をもつ種が塊状となったものかどうかは今後の課題である。 3.今回Desmophyllum属に同定したサンゴには、属の識別に関するこれまでの一般認識では説明できないサンゴ体が含まれている。つまり莢の構造、サンゴ個体の外形は全く同じでありながら、同じ洞窟内で単体と群体が共存している。この事実は属の分類形質の再検討をうながすものである。 4.今回、海底洞窟の現生六放サンゴの他に、第四系琉球層郡中にみられる化石海底洞窟の古生物学的研究を行った。沖縄本島南部の港川層には更新世の化石海底洞窟があり、硬骨海綿を多産する。六放サンゴは未発見であったが、この事実は、現世の海底洞窟において、洞窟入口付近に硬骨海綿が多く生息し、六放サンゴ類は一般に洞の奥に生息していることと符号している。
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