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1997 年度 研究成果報告書概要

無節サンゴモの傷の修復様式とその進化古生物学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 08640586
研究種目

基盤研究(C)

配分区分補助金
応募区分一般
研究分野 層位・古生物学
研究機関東北大学

研究代表者

井龍 康文  東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00250671)

研究期間 (年度) 1996 – 1997
キーワードcoralline algae / evolutionaly biology
研究概要

全世界の浅海域に広く分布し、繁栄している無節サンゴモの藻体の修復機構を解明するために、藻体に人工的に傷をつけ、その修復過程の経時的観察を行った。実験に用いた無節サンゴモは沖縄県石垣島川平湾に生育する枝状種のヒライボで、これに水平な傷と垂直な傷をつけ、それぞれ、以後14日間および7日間にわたって、1日間隔で傷の修復を観察した。その結果、以下が明らかとなった。
(1)水平な傷の修復の際には、傷に対して垂直方向に再生部が形成されてゆく場合と、傷の縁辺部より水平方向に再生部が伸びてゆく場合とがある。前者の場合、傷つけられた細胞の数層下の細胞が介在分裂細胞となり、その下に細胞が形成され、次いで上には表層細胞が形成される。ただし、表層細胞が先行して形成される場合もある。いずれの場合にでも、修復部は一組織性(monomerous)である。新たに形成された表層細胞の丈夫に位置する細胞群は、やがて壊死部として藻体から剥離するが、この際、剥離されるべき細胞群下には複数層の表層細胞の形成がみられることがある。これに対して、後者の場合、修復部は側方と上方に伸長してゆく2群の細胞糸によって形成される。すなわち、修復部は二組織性(dimerous)である。
(2)垂直な傷の修復の場合には、傷の縁辺部・側面部と底面とに新たな細胞群の形成が認められる。傷の縁辺部・側面部では二組織性の修復部が認められる。底面では水平な傷と同様に2つの様式の修復過程がみられる。
以上より、表層細胞は、従来唱えられていたような、フィラメントの終点や分裂組織の保護、着生藻類が付着したときはげ落ちる部分といった役割だけでなく、壊死部を積極的に剥離するという役割も持っており、藻体の維持に不可欠な部位であると考えられる。また、新生代における無節サンゴモの急速な繁栄は、従来主張されてきたような草食動物に対する防御機能の進化によってもたらされたものではなく、草食動物の増加によってソレノポラ類(藻体表面の軟組織に生殖組織を持っていたと考えられる、無節サンゴモの祖先的な植物)が衰退し、代わって無節サンゴモがソレノポラ類のニッチエに進入し、置き換わった結果であると考える方が妥当である。

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公開日: 1999-03-16  

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