研究概要 |
研究計画に沿い、これまで詳細な検討がなかった日本海側における鮮新世の軟体動物群について検討した。今年度は富山県の三田層から昨年度に引き続き軟体動物化石を採集した。また、新たに新潟県鍬江層から軟体動物群を採集し、解析を行なった。 富山県婦中町から八尾町にかけての鮮新統三田層からは、すでに咋年度70種を識別した。下部の群集中には長野県の下部鮮新統萩久保層(4-3Ma)の軟体動物群との共通種が多く見られ、中新世からの残存種も認められる反面、暖流系は含まれない。一方、上部の群集は中新世からの残存種は認められず、多くの暖流系種を含むことを確認した。 新発田市周辺の鮮新統鍬江層の1産地より72種の貝化石を採集した。また、この産地直下の1試料よりNN16下部から中部(3.66-2.78Ma)に相当する石灰質ナンノ化石が得られた。採集された貝化石群中には大桑・万願寺動物群に特徴的な絶滅種が含まれている。また、長野県北部の鮮新統″柵層″より報告されているGlycymeris minochiensis (Yokoyama)も採集された。本貝化石群中には上部〜下部浅海域に生息する16種の寒流系種とともに、個体数は少ないが、10種の上部浅海性暖流系種が含まれる。昨年度検討した秋田県の天徳寺層からは本化石群同様、多くの上部浅海性暖流系種が認められている。しかし、共通種は少なく、Astralium,Mammilaの2属が共通しているにすぎない。一方、ほぼ同時期に堆積した長野県北部の荻久保層産貝化石群とはGlycymeris minochiensisや大桑・万願寺動物群の特徴種が共通している。しかし、鍬江層産化石群中には中新世型の残存種は見いだされないことが明かとなった。
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