研究概要 |
本年度は,岩手県,岡山県,広島県,大分県などの第四紀哺乳動物化石産地や遺跡で野外調査を行うとともに,大阪市立自然史博物館や大阪市立大学,京都大学,国立科学博物館,お茶ノ水女子大学,岡山大学などの研究機関や博物館で化石および現生哺乳類標本の調査・研究と研究資料の収集を行った。また研究代表者と分担者の間で,これまでに集まった古生物学的なデータと考古学的なデータの簡単なすり合わせも行った。その結果,本州・四国・九州地域での後期更新世〜完新世の哺乳動物相の変化の中で,どのような種類がどのような時期に,どのようにして絶滅していったのかという絶滅のパターンに関するデータをいくつか得ることができた。それらのデータによると,本州・四国・九州地域では,北アメリカで言われているような大型獣の大量絶滅がごく短い時間に急激に起ったのではなく,比較的徐々に絶滅が起ったのではないかと思われる。しかし,各種類の絶滅期は,これまでにわかっているところでは,20,000年前から10,000年前にかけての期間に集中しているようで,この間の人類文化の変化を見ると旧石器時代から縄文時代への移行で示されるような顕著な変化が見られる。人類の文化の変化が哺乳類の絶滅をもたらしたのか,あるいは逆に種々の環境変化や哺乳類の絶滅が人類の文化を変化させたのか,それぞれ可能性が考えられるが,今後もそれに関するデータを増やして種々検討してみたい。
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