研究概要 |
本年度も昨年度に引き続いて,岩手県,栃木県,岡山県,広島県,山口県,大分県などの第四紀哺乳動物化石産地や遺跡で野外調査を行うとともに,その他の地域で新産地発見のための予備的調査を行った。また,千葉県立中央博物館,国立科学博物館,お茶の水女子大学,京都大学,大阪市立大学,大阪市立自然史博物館,兵庫県立人と自然の博物館,岡山大学,徳島県立博物館などの研究機関を訪ねて,所蔵標本の調査や研究資料の収集などを行った。そのような研究活動で得られたデータや昨年度のデータをもとに,研究分担者と互いのデータのすり合わせを行うとともに意見交換・討論を行って,後期更新世〜完新世の本州・四国・九州地域での動物相の変化や哺乳類の絶滅現象と人類の活動について考察し、一応の予察的な研究結果を得た。その結果は,広島大学文学部帝釈峡遺跡群発掘調査室年報X11(1997)に予察的な論文としてまとめた。その内容を要約すると次のようになる。 この時期の動物相の変化は,後期更新世の豊富な動物群の中から大型種を中心に絶滅が起り,それらの種の消滅によって完新世の比較的貧弱な動物相に移り変わったと考えられる。それらの絶滅期は20,000年前から10,000年前に集中しているようであるが,絶滅は北アメリカのように急激に起ったのではなく,絶滅種が次第に少なくなって,遂には絶滅するというパターンが考えられる。石器や土器の変遷から推定される人類文化の変化もこの時期には徐々に起っているようで,新しいタイプの出現によって文化の様相が一変するようなことはなく,その点で絶滅のパターンとの関連性が予測される。
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