研究概要 |
初年度の本研究では有孔虫の結晶構造の変異幅を解析するための方法について検討した.検討した有孔虫は山陰沖の現生試料の中から粒状構造を示す17種類である.最終室の殻壁の偏光画像を直接コンピュータへとりこみ,画像処理によって2値化し,結晶単位の周囲長(p)と面積(A)を測定した.さらに,殻壁の一部について,本年度購入した3軸測長顕微鏡によって,殻壁の厚さを測定した. 結果として,結晶単位の面積と周囲長との間には次のような関係があることが明らかになった. 1.A/P値によって,17種類の有孔虫を3つのグループに区分することできる.A/P値が2.8前後になるもの,2.0前後のもの,1.5前後のものである. 2.有孔虫の殻壁構造は,同一種であっても個体成長によってその形状が変化していることが認められた.そのため,成殻と幼殻についても,A/P値を測定した.幼殻は高いA/P値となり,成殻は低いA/P値を示すことが明かとなった. 3.有孔虫の殻壁構造は,種類と成長段階によってA/P値が異なることが判明したが,そのA/P値を左右する要因は,殻壁の厚さによることが明かとなった.測定を実施した全ての種について殻壁の厚さ(X)とA/P値(Y)の関係を求めると,Y=2.37-0.68^*logXに近似させることができ,その相関係数(r)は0.84になった.すなわち,この関係式を利用して,有孔虫の殻壁の厚さがA/P値より求めることが可能となった. すでに採集している試料のなかでは,山陰沖では日本海の基本的な水塊がカバーされており、有孔虫群集の分布もほぼ明らかとなっていることから,次年度では,この方法を用いて殻壁構造と外部環境である溶存酸素や有機物質量等の関係を明確にしていく予定である。
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