平成9年度は、中央北海道天塩中川地域に分布する上部白亜系蝦夷層群オソウシナイ層上部層を対象に試料採取と古地磁気測定を行った。調査ルートは同地域の安平志内川、炭の沢、オソウシナイ沢の3ルートで、前層厚は約200mである.測定の結果、炭の沢のオソウシナイ層最上部6サイトが逆帯磁、その直下のオソウシナイ沢4サイト及び安平志内川7サイトが正帯磁、さらに下位のオソウシナイ沢1サイト、炭の沢1サイト、安平志内川5サイトが逆帯磁、その他の下位21サイトがすべて正帯磁であった.これらを標準古地磁気タイムスケールと対比することにより、上位から順に、Campanian階のChron32r.lr、C32r.ln、C32r.2r、C33nにそれぞれ対比できることが分かった.さらに既存の大型化石層序と比較すると、Sphenoceramus schmidti zoneがC32r.lr、Sphenoceramus orientalis zone-がC32r.ln、Polyptychoceras pseudogaultinum zone上部がC32r.2rに対比できる. これらに相当する層準は南サハリンの上部白亜系にも存在するので、相互の対比により、これまで議論の多かった北西太平洋上部白亜系大型化石層序の年代対比が可能となった。特にS.schmidti zone-の時代範囲がCampania階後期のC32r.lr、すなわち絶対年代に換算して73.5〜74Maであることが判明したことは特筆に値する。 北海道以外では、九州天草地域獅子島の上部白亜系御所浦層群、および山口県西部の関門層群上部層を調査し、白亜紀磁気静穏期Chron34に相当する正帯磁層準を見いだした。これらの結果から、白亜紀後期以降の西南日本の古地磁気極移動曲線を確立することができた。
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