研究概要 |
本研究の目的は,秋吉石灰岩層群下部層(石炭系)中に発達する生物礁フレームワークを構築する化石群を古生態学・古環境学的に解析し,これら化石群の石炭紀を通じて消長(時代遷移過程)を明らかにするとともに,秋吉生物礁複合体の形成メカニズムと地史を解明することである。本研究により以下の諸点が明かとなった。 1.山口県秋吉台の東の台長者が森地域および西の台住友大阪セメント採石場内を中心に実施した野外調査結果および作製した石灰岩石板と薄片の検討結果から,中期〜後期石炭紀の時代の秋吉生物礁複合体を形成する石灰岩は,20数種の特徴的な生・岩相に区分できることが明かとなった。 2.中期石炭紀の造フレームワーク化石として最も重要なものは四放サンゴ類,ケ-テテス類,層状石灰藻類および付着性コケ虫類である。これらの化石群は生物礁複合体内で,その組み合わせや成長形態を変え,10数種類の異なるタイプのフレームワークを構築している。なお,これまで層状石灰藻類とされていたものの中に,北米等で記載されている石灰海綿類が含まれることも新たに明らかになった。 3.フレームワークや生・岩相の組み合わせと分布の違いによって,礁複合体内部に明瞭な同心円状の分帯構造が見られること,数層準で海退時に形成された不連続面の存在を確認したことから,生物礁のタイプが基本的には環礁型であったこと,および礁の形成と形態が海水面変動の影響を大きく受けていることを明らかにした。 4.後期石炭紀になると,造フレームワーク化石としてのケ-テテス類の退場と四放サンゴ類の衰退に伴い,新たに海綿類,ヒドラ類,下位とはタイプの異なる層状石灰層類等が造フレームワーク化石として新たに参画し,生物礁が構築されている。しかし,その詳細については不明な点も多く今後の研究課題である。
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