研究概要 |
研究代表者および分担者は,1996年から1997年にかけて秋吉台の長者ケ森付近および住友大阪セメント南台採石場を中心に野外地質調査と試料の採集を行った。採集した石灰岩および化石試料を,約50枚の大型研摩石板と約300枚の大型薄片に加工し解析した。野外調査結果と作製試料の解析結果から,以下のような研究成果が得られた。 1.中期石炭紀の秋吉生物礁複合体を構築する石灰岩は,生物礁複合体内の個々の小環境に対応して生じた特徴的な生・岩相組み合わせで示される約30の石灰岩型に区分できる。 2.中期石炭紀の秋吉生物礁複合体を構築する造フレームワーク化石として最も重要なものは四放サンゴ類,ケ-テテス類、層状石灰藻類および付着性コケ虫類である。これらの化石群は生物礁複合体内で,その組み合わせや成長形態を変え,10数種類の異なるタイプのフレームワークを構築している。これらのフレームワークや生・岩相の組み合わせと分布の違いによって礁複合体内部に明瞭な分帯構造が識別される。 3.フレームワークや生・岩相の組み合わせと分布の違いによって、礁複合体内部に明瞭な同心円状の分帯構造が見られること、数層準で海退時に形成された不連続面の存在を確認したことから、生物礁のタイプが基本的には環礁型であったこと,および礁の形成と形態が海水面変動の影響を大きく受けていることを明らかにした。 4.後期石炭紀になると,造フレームワーク化石としてのケ-テテス類の退場と四放サンゴ類の衰退に伴い,新たに海綿類,ヒドラ類,下位とはタイプの異なる層状石灰層類等が造フレームワーク化石として新たに参画し,生物礁が構築されている。しかし,その詳細については不明な点が多く今後の研究課題である。
|