研究概要 |
CMコンドライトは母天体上で水質変成作用を受けている.この水質変成作用により,CMコンドライトに含まれるコンドルールのメソスタシスは層状珪酸塩鉱物に置換されている.このような物質は"spinach"と俗称され,顕微鏡下では緑色,黄緑色,黄土色,赤褐色なとの様々な色を呈する.本研究では,Murchison,Murray,Y75293,Y791198,Mighei,Nogoya,Y82042の7種類の隕石に含まれるこのような層状珪酸塩について,顕微可視分光計を用いた可視吸収スペクトルの分析と,EPMAを用いた化学組成の分析を行った(Nogoyaは現在も測定中).更に,これらのL^*a^*b^*色空間における値を計算し,色の比較も行った. 水質変成の程度はほぼ上記の順である.このうち,Y82042とNogoyaに含まれていたクラストの水質変成の程度は他の5つの隕石に比べてすっと高い.層状珪酸塩は水質変成の程度が高いものほどより均質な組成を持ち,Mg/(Mg+Fe)比が大きい.そして,組成が揃っているものでは,スペクトル・色も揃っている.しかし,水質変成作用の程度に応じて,さまざまな色を呈していた層状珪酸塩が単純に黄土色から赤褐色のものばかりになるといった単純な変化ではなく,たとえばNogoya中の強い水質変成を受けたクラストでは層状珪酸塩は薄緑のものが多いといった例外が見られる.こうした層状珪酸塩の色の違いは,可視吸収スペクトル中の700nm付近を中心とする幅広い吸収バンドの存在と,短波長域での吸光度の増加がどのように起きているか(450-500nmの肩の有無を含む)ということによる.緑色の層状珪酸塩と黄土色から赤褐色の層状珪酸塩では,それらのFe^<3+>/Fe^<2+>比は恐らく異なっているであろう.このことを確かめるために,いろいろな蛇紋石属鉱物の化学組成,可視吸収スペクトル,色,Fe^<3+>/Fe^<2+>比の関係も測定中である.
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