研究概要 |
本年度は火山フロントに位置する火山(岩手、蔵王)について代表的試料を収集した。引続き、岩手火山の代表的試料に関して、蛍光X線分析法による主成分および微量成分分析(茨城大学設置:現有、消耗品:薬品類、謝金:実験補助)プラズマ発光分光分析法での希土類元素分析(茨城大学設置:現有、消耗品:薬品類、ガラス器具類、アルゴンガス等)を行った。岩手火山ではマントル起源と信じられている低アルカリソレアイトマグマのみからなる、同一マグマバッチのマグマ系列が同一火山体内に5系列識別された。本研究で新たに提案した、ある1火山に実際に噴出した複数のマグマ系列の組成特性をもとに、1火山下での垂直方向、あるいは時間経過の中における、マグマ源マントルの不均質性を見いだし、この差こそが付加されたフルイドによる化学特性(マントル交代作用)であると考える方法に基づいて火山フロント下にもたらされるスラブ由来フルイドの化学特性を推定すると、Rb,Kが顕著に付加し、同じLILでもBaはごくわずかしか付加されていない事になる。この結果は、本研究代表者が東北日本火山フロントに共存するソレアイト、カルクアルカリ両系列間に見られる化学特性の違いをもとに提唱した結果(1994年)と符号する。つまり、ソレアイト、カルクアルカリ両マグマ間の液相濃集元素特性の違いにスラブ由来フルイドによるLIL元素の選択的付加が色濃く反映されている可能性がある事を示す。 東北日本南部の代表として現在、蔵王火山のソレアイト試料を分析中である。
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