加賀白山で代表される両白山地の火山群の中で毘沙門岳の火山岩類だけがアダカイト質の岩石であることを示し、それが2種類以上のマグマの混合で生じたことを化学組成と^<87>Sr/^<86>Srと^<143>Nd/^<144>Ndの同位体組成から明らかにした。輝石斑晶のMg/Fe比に関する頻度分布が二峰性を示し、さらにシリカに富む岩石中ほどMg/Fe比の高い輝石の割合が高いことなどから、混合マグマの端成分の一つはデイサイトであるが、通例に反してMg/Fe比が高いと判断した。そしてまた、シリカに富む(即ちMg/Fe比の高い輝石の割合が高い)岩石ほどSr/Y比が高くYに乏しいので、毘沙門岳の火山岩類がアダカイト質な性質はこの特異なデイサイト端成分に由来すると言える。この端成分の同位体組成はMg/Fe比の高い輝石斑晶のそれで代表されるはずであるが、普通輝石斑晶の^<87>Sr/^<86>Srと^<143>Nd/^<144>Ndの同位体比は、普通輝石がmg♯(=100Mg/(Mg+Fe))=81.6〜84.2の間は全岩のそれと誤差の範囲内で一致する。即ち輝石斑晶は混合後のマグマと同位体平衡に達していた。換言すれば、化学成分の拡散よりも同位体の平衡化の方が急速であろうとの研究開始前の予測が正しかったことが証明された。一方、mg♯が84.8の普通輝石は、全岩とは大きく異なり、基盤の白亜紀火山岩類のレスタイトと似た同位体比を有する。故にアダカイト質端成分マグマの成因に白亜紀火山岩類のレスタイトの再溶融が本質的な貢献したと考えられる。 本研究ではさらに、マグマ発生場および地殻内でのマグマの同位体的変化を解明するために、初生マグマおよびそれからの派生マグマが噴出した二ヶ所の火山岩類(上野玄武岩類と瀬戸内高マグネシア安山岩)についてもケーススタディーを行った。
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