研究概要 |
本年度は,布賀に産するスカルンに伴うホウ産塩鉱物の調査での試料の検討と,これらのホウ産塩鉱物の成因について考察した.その結果,新たに日本新産のborcarite,新鉱物のparasibirskiteを見いだし,これらの物性を明らかにすることができた.以下にparasibirskiteの物性とホウ産塩鉱物の成因について示す. 1.Parasibirskiteの物性 Parasibirskiteはsibirskite,froloviteなどと共生して,最大で40μm×20μm×3μmの板柱状結晶の亜平行集合体として産する.肉眼的には白色不透明で,弱い真珠光沢を示す.屈折率はα=1.556(2),β=1.593(2),γ=1.663(2).ビッカース硬度は121kg/mm^2(25g荷重),測定比重は2.50(1),ヘキ開は(010)に完全.X線回折値より求めた格子定数は,a=6.722(4),b=5.437(2),c=3.555(2)Å,β=93.00(5)°,V=129.8(2)Å^3,Z=1.分析値からO=6として計算した実験式はCal.985B1.945O4.901・1.099H2O.TG曲線は400℃付近で脱水による約9%の減量を示し,DTA曲線ではそれに伴う吸熱ピークが371℃,414℃に見られる.赤外吸収スペクトルによると3350cm^<-1>にOHの伸縮に伴う吸収スペクトルが,1420cm^<-1>から305cm^<-1>にかけてホウ酸塩に特徴的な吸収スペクトルが見られる. 2.ホウ産塩鉱物の成因 ホウ産塩鉱物を含む脈の中心部には,無水のtakedaiteが生成している.このtakedaiteの周辺部にsibirskite,parasibirskiteなどの含水ホウ酸塩鉱物が産している.このような産状から,CaO-B2O3-H2O系鉱物の生成は次のように考えられる. (1)ホウ素を含む流体が母体の結晶質石灰岩と反応して,初生的に無水の鉱物であるtakedaiteが生成した. (2)その後の熱水溶液による変質によってtakedaiteから含水ホウ産塩鉱物が,二次的に生成された.
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