研究概要 |
別子型鉱床は我が国では黒鉱鉱床とならんで重要な鉱床タイプであるにもかかわらず,その硫黄同位体比の研究は黒鉱鉱床に比較して非常に少ない.最近の海底(海嶺)硫化物鉱床の研究の進展に伴って,それが陸上に付加された鉱床の可能性がある別子型鉱床の研究の重要性は増大している. 三波川帯には低変成度から高変成度の別子型鉱床が数多く存在する.その中には,母岩が火山岩よりはむしろ泥質岩が優位である鉱床も存在する.これらの変成度及び母岩の異なる鉱床の硫黄同位体比の分布を比較することにより,初生硫黄同位体比と母岩との関係,また,初生硫黄同位体比の変成作用による修正について考察する.さらにまた,三波川帯の別子型鉱床と,母岩に砕屑性堆積物が卓越し火山噴出物質が乏しい四万十帯の鉱床との比較,また,バイモーダルな火山活動に成因的関連を有すると考えられる茨城県日立鉱床,岡山県柵原鉱床などのキ-スラーガー,現代の海底硫化物鉱床と比較して,別子型鉱床の成因,特に硫黄の起源について考察する. 本年度は,すでに採取してある四国地方の三波川帯の別子型鉱床(佐々連鉱床,大久喜鉱山,高越鉱山等)の鉱石試料の顕微鏡観察と鉱物分離を行い,また,これまで使用してきた硫黄同位体比測定のための二酸化硫黄調整ラインの大幅な改造を行った.これで,二酸化硫黄調整の準備が完了したので,来年度のはじめには,上記の鉱床の鉱石試料について硫黄同位体比の測定結果が得られる予定である.また,チャートが卓越した累層中に胚胎され,我が国の別子型鉱床としては特異な存在である丹波帯の滋賀県土倉鉱山の鉱石の前処理を行う予定にしている.
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