研究概要 |
本研究の目的は結晶の形が、成長条件によってどのように制御されるかを調べることである。この問題は結晶成長の素過程に関連した純粋学問としてのみならず、鉱物結晶の生成環境を知る手がかりとして、また晶析工業分野での応用としても大変重要な問題である。本研究の特徴は、成長温度をパラメータの一つにとりいれたことである。そしてNaBrO_3結晶の晶相変化を、縦軸に成長温度、横軸に過飽和度をとったダイアグラムにまとめた。 成長条件と晶相変化との関係は温度制御のできる顕微鏡用加熱冷却ステージを用いて行った。このステージ上に成長セルをおき、成長する結晶を微分干渉顕微鏡を用いてその場観察した。試薬には和光純薬のNaBrO_3(99.5%)を用いた。成長条件を以下のように変化させて晶相変化との関係を調べた。(i)過飽和度[σ=In(C/Ce)=0-0.2,Ce;平衡濃度]、(ii)成長温度;20-56℃、(iii)不純物添加;酢酸1.15mol.%である。成長の様子は間欠的に写真撮影をしながら記録した。過飽和度や成長温度の違いによって、polyhedron,cube(正六面体)やtetrahedron(正四面体)の三つの晶相を示すことがわかった。 結果を要約すると次のようである。(i)cubicのほうがtetrahedralよりも高温側で形成される。この変移温度は、不純物を添加した場合のほうが添加しない場合よりも高くなる(不純物添加なし;34℃、酢酸添加;44℃,ただしσ<0.1)。(ii)不純物を添加した場合もしない場合も、tetrahedralからcubicへの変移温度はσ>〜0.1で急激に減少することがわかった。(iii)Polyhedralの形成領域は不純物を添加した場合もしない場合もいずれも低過飽和度、高温度領域であった。
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