研究概要 |
本研究の目的は、NaBrO_3結晶の晶相が成長条件によってどのように変化するかを調べることである。ノンドープの水溶液や酢酸1.15mol.%水溶液からの成長の場合についての結果は昨年度の本研究報告書で発表した。本年度は酢酸濃度を2.8mol.%にした場合の結果について報告する。結晶成長は温度制御のできる顕微鏡用加熱冷却ステージを用いて行った。成長条件を以下のようにして晶相変化との関係を調べた。(i)過飽和度(σ=1n(C/Ce)=0-0.42,Ce:平衡濃度)、(ii)成長温度:15〜52℃,(iii)酢酸濃度:2.8mol.%である。成長の様子はビデオ録画した。また結晶の面指数は本年度購入した複円反射測角器(日本地科学者)を用いて決定した。 結果を要約すると次のようである。(1)本実験においても、過飽和度や成長温度に依存して、結晶は3つの形で成長した。すなわち、cube,tetrahedronおよびその中間形のintermediate formである。これらの結果は、縦軸に成長温度、横軸に過飽和度をとったダイアグラム(モルフォドロム)にまとめた。こうした結果は昨年報告したもの(ノンドープや酢酸1.15mol.%の場合)と同じであった。ただしモルフォドルムの中での各形の形成領域は異なっていた。(2)1.15mol.%酢酸をドープした場合には、低過飽和度領域(σ=1nC/Ce<0.1)でのtetrahedronの形成温度は、ノンドープの場合にくらべてはるかに高温領域までひろがっていたが、ドープ量を増やした(2.8mol.%)今回の実験では、予想に反してこのtetrahedronの形成温度はノンドープの場合よりも低温域に限られていた。(3)高過飽和度領域(σ>0.1)では、酢酸ドープの影響は小さいものの、濃度が高くなるにつれてtetrahedronの形成域は狭くなる傾向があった。(3)複円反射測角器を用いてintermediate formの結晶の面指数を測定したところ、この形は{111}と{100}から構成されていることがわかった。
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