研究概要 |
本研究の目的は結晶の形が、成長条件によってどのように制御されるかを調べることである。この問題は結晶成長の素過程に関連した純粋学問としてのみならず、鉱物結晶の生成環境を知る手がかりとして、また晶析工業分野での応用としても大変重要な問題である。本研究の特徴は、成長温度をパラメータの一つに取りいれたことである。そしてNaBrO_3結晶の晶相変化を、縦軸に成長温度、横軸に過飽和度をとったダイアグラム(モルフォドロム)にまとめた。成長条件と晶相変化との関係は、温度制御のできる顕微鏡用加熱冷却ステージを用いて調べた。すなわちこのステージ上に成長セルを置き、成長する結晶を微分干渉顕微鏡を用いてその場観察した。成長条件は(1)過飽和度σ=lnC/Ce=0-0.4,(2)成長温度=20-60℃、(3)不純物;酢酸1.15モル%、酢酸ナトリウム1.0モル%、である。成長の様子は間欠的に写真撮影したり、ビデオ録画した。過飽和度や成長温度の違いによって、cubic form,tetrahedral formおよびintermediate formの三つの晶相を示すことが判った。結果を要約すると次のようである。(1)いずれの場合もcubic formのほうがtetrahedral formより高温側で形成された。しかしこの転移温度は不純物の種類によって大きく変化した。σ<0.1においては、ノンドープでは約34℃、酢酸ドープでは44℃、酢酸ナトリウムドープのときは25℃であった。これより酢酸は{111}の成長を抑制するが、酢酸ナトリウムは{100}の成長を抑制することが判った。(2)いずれの場合もσの増大につれてこの転移温度は減少する傾向があった。
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