前年度の資料の産状調査と収集に引き続き、今年度は東北地方、山口県および島根県の日本海側、佐賀県、鹿児晶県南部などを調査対象とした。。山口県阿武町の熱水変質によって形成された「ろう石」中から多くの燐酸塩鉱物を確認した。そのうち、トロール石、ゴルセイ石、ゴヤス石などは我が国初産であり、互いに密接に共生し、ゴルセイ石はバリウムと少量のストロンチウムを、ゴヤス石はストロンチウムのみを濃集している。両者は結晶構造的に同一であるが、熱水変質の条件次第では連続固溶体が存在しないことが明らかになった。また、これらは同構造のフローレンス石とも共生するが、ゴルセイ石、ゴヤス石には希土類元素が含まれないことも興味深い。また、鹿児島県枕崎周辺および静岡県宇久須周辺の明ばん石岩中に希土類元素を含むカルシウムの燐酸塩鉱物であるクランダル石や燐酸塩・硫酸塩複合鉱物であるウッドハウス石を新たに発見した。前年度と今年度の分析結果と電子顕微鏡下での観察から、熱水変質の過程でおこるレアメタルの集積順序が明らかになった。陰イオンの組み合わせにも明瞭な形成順序、例えば(PO_4)(PO_4)、次に(PO_4)(SO_4)、最後に(SO_4)(SO_4)というような事実が存在することを発見した。
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