本年はマグマ-水相互作用を理解する上でキ-となる火山爆発エネルギーの実測のためのシステム作成とその設置、及び、爆発エネルギー評価のためのスケーリング則確立を目的とした爆発実験を行った。その結果以下のような成果が得られた。 1 作成したシステムは火砕流動圧計測用微差圧計/シース熱電対/地震計/パソコン/光磁気ディスクからなる火山性流れ現象の計測システムと、圧電素子圧力センサー/デジタルオシロスコープ/パソコン/光磁気ディスクからなる火山性衝撃波計測用の2システムである。これらのシステムを設置し計測を行うため、1996年10月阿蘇火山に計測用の簡単な施設を作成し、火山性流れ現象の計測システムの設置を終了している。 1997年1月31日、阿蘇火山を訪れ、施設の管理維持とデータの回収を行った。光磁気ディスクには13個の記録が残されていたが、火山爆発に結びつくものではなかった。 2 マグマ水蒸気爆発によって発生する爆風の評価に関する研究として、北海道壮瞥町において野外実験を行った。実験結果のまとめと解釈に関しては現在整理中である。 3 マグマ水蒸気爆発現象の新しいモデルとして、以下のような「水-堆積物ジェット貫入型マグマ水蒸気爆発」を提案した。マグマが地下の帯水層中に貫入するとマグマ水蒸気爆発を起こすことがある。このメカニズムの重要なポイントとして帯水層の液状化を想定した。計算結果によれば、帯水層がマグマの熱によって加熱された場合、地震などのわずかな振動によって液状化が発生し水-堆積物からなるジェットが生まれる。このジェットは高温のマグマ中に貫入し、水とマグマとの瞬時接触界面温度が自発核生成温度を超えるため、爆発的な蒸発現象が起き、これがマグマ水蒸気爆発の原因になっているものと考えた。
|