試料採取は主に日加定期貨物船上に設置した大気粒子捕集装置と降水自動採取装置によった。化学成分のイオン分析はイオンクロマトグラフ、不溶性粒子の元素分析はX線マイクロアナライザーによって分析した。北太平洋高緯度海域での1996年2月から9月までの10航海について以下に得られた知見をまとめた。 ○エアロソルについて 1.外洋域でクロリンロスが生じていた。硝酸塩濃度は沿岸域で高く、外洋域で低いが、非海塩性硫酸塩は沿岸域と外洋域の差が少なく、海洋生物起源からの寄与があると考えられる。 2.陽イオンについては、カリウム、マグネシウムは海水起源であり、カルシウムの40%は非海塩性であった。アンモニウムイオンは両大陸の沿岸域で高くなる傾向があったが、非海塩性カルシウムはアジア大陸沿岸域のみで高く、黄砂粒子に過剰に存在する土壌粒子起源である可能性を示した。 ○降水について 3.pHは外洋域でも酸性雨とみなされる値を高い頻度で測定した。それらの試料の大部分で高濃度の非海塩性硫酸塩を検出した。 4.硝酸塩濃度は非海塩性硫酸塩に比べ、海域による濃度差が少なく、変動も小さかった。短期間の降水現象による窒素酸化物の海洋表層へのフラックスは、栄養塩として海洋生物に影響を与える可能性を示した。 5.降水中の不溶性粒子の元素組成は春に鉱物粒子の占める割合が大きく、フラックスも高い。降水毎の粒子数濃度があまり変動せず、これらの粒子は雨滴による除去、ウオッシュアウトによるものであることが明らかになった。
|