溶媒効果を取り入れた分子軌道法の開発と溶液内化学反応への応用

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08640633
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 菊池 修 筑波大学, 化学系, 教授 (30015771)
• 研究分担者: 守橋 健二 筑波大学, 化学系, 講師 (90182261)
• キーワード: 溶媒効果 / 連続体モデル / ab initio法 / スルホニウム / アラニン

研究概要

(1)一般化ボルン式に基づく連続体モデルをSCF計算に取り入れるab initio MO/GB法を開発した。これまでの方法に加えて、拡散関数を加えることができるように改良し、陰イオンを含む反応系に応用できるようにした。水溶液中における塩化ブチルのSN1型解離反応に対するab initio MO/GBポテンシャルエネルギー曲線は、基底関数に大きく依存したが、気相中におけるエネルギー計算が正しければ、溶液中での反応エネルギーの変化を正しく再現できることを示すことができた。
(2)ab initio MO/GB法とMCシミュレーションを併用し、L-アラニン双対イオンの水溶液中における構造を理論的に予測した。アミノ酸の水溶液中での構造はパリティ非保存相互作用とキラリティの起源と関連しており、また、生体分子の化学進化という観点からも特に注目されている。この研究により、L-アラニンの水溶液中におけるコンフォメーションに対して信頼できる結果を得ることができ、研究成果を「生命の起源」国際学会で発表することができた。
(3)生体内における反応で重要なアルキルスルホニウムイオンの置換反応をab initio MO/GB法により解析し、反応機構と反応活性化エネルギーに与える溶媒の効果を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] O.kikuchi,Y.Sano,O.Takahashi,K.Morihashi: "Ab initio MO study of the solvent effect on the SN2 reaction of the trimethylsulfonium cation with chloride anion" Heteroatom Chemistry. 7. 273-279 (1996)
• [文献書誌] O.Takahashi,H.Sawahata,Y.Ogawa,O.Kikuchi: "Incorporation of solvent effects into ab intio molecular orbital calculations by the genelized Born formula" J.Mol.Struct.(Theochem). (in press). (1997)
• [文献書誌] T.Watanabe,K.Hashimoto,H.Takase,O.Kikuchi: "Monte Carlo simulation study on fonformation and interaction of glycine zwitterion in aqueous solution" J.Mol.Struct.(Theochem). (in press). (1997)
• [文献書誌] O.Kikuchi,T.Watanabe,Y.Ogawa,H.Takase: "Ab initio MO and Monte Carlo simulation study on the conformation of L-alanine zwitterion in aqueous solution" J.Phys.Org.Chem.(in press).