今年度はまず赤外超短パルス発生システムの改良を行った。具体的にはモードロック式ピコ秒Nd:YAGレーザーの第2高調波を励起光として、BBO結晶を2個使用した光パラメトリック発生・増幅(OPG・OPA)システムに回折格子を組み込むことにより、スペクトル線幅の狭い近赤外ピコ秒パルス(1.2〜1.4μm)を発生させた。次に得られた近赤外パルスとピコ秒Nd:YAGレーザーの基本波との差周波光をAgGaS_2結晶(AGS結晶)により発生させ、多層膜フィルターとGeフィルターによりYAGレーザーの基本波と近赤外パルスを除去することで中赤外パルスを抽出した。得られた赤外超短パルスのパフォーマンスは、波長可変領域が3〜8μm、時間幅24ps以下、スペクトル線幅3.5cm^<-1>で出力エネルギーが6μm付近で約40μJであった。また、赤外パルスの波長の掃引は、コンピューターを用いて2個のBBO結晶、回折格子、AGS結晶の各々の角度を同期して回転させることにより行った。 また、酸化物であるゼオライトのブレンステッド酸点水酸基に水素結合して水分子(H_2O)のOH伸縮振動の振動励起状態の寿命をピコ秒赤外パルスを用いたポンプープローブ法により測定した。その結果、123Kにおける振動励起寿命が75psであった。さらにこの振動励起寿命は著しい温度依存性を示し、223Kにおいては40psとなることを見出した。得られた寿命の温度依存性から、振動エネルギーの緩和には80cm^<-1>近辺の低波数フォノンモードが関与していることが明らかになった。
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