液晶相を規定する分子間相互作用を解明するために、液晶物質の系統的な結晶構造解析を行なう過程で、見いだした結晶多形について、以下の研究を行なった。 1.1-メチルアルコキシ基をもつキラルなビフェニルエステルに異性体の単結晶作成を行ない、一部の化合物について結晶多形の存在を見いだし、構造解析をおこなった。さらに、結晶相から液晶相への転移挙動を示差走査熱量測定および温度可変顕微赤外分光法によって追跡し、今回解析ができた結晶形は、より、液晶相に近い高温安定形であることを見いだした。また、一連のキラルなどビフェニルエステルの結晶構造と液晶挙動の関連を検討する中で、キラル基のかさ高さがスメクチック相の安定性に決定的な影響を及ぼすことを明らかにした。 2.1-メチルアルコキシカルボニル基をもつ反強誘電性液晶化合物で見いだした結晶多形の、異常な融解挙動を解明するために、スキャン速度を変化させて示差走査熱量測定を行なった。 3.1-メチルアルコキシカルボニル基をもつ反強誘電性液晶化合物の温度可変顕微赤外測定を行ない、相転移における分子構造の変化を検討している。 4.アルコキシシアノビフェニルの同族列について見いだした結晶多形は、いずれも室温で素早く劣化するので、高速スキャンの温度可変顕微赤外分光法による測定条件を検討した。 5.1.および3.の赤外分光測定は、KBr錠剤を用いたが、今後は、単結晶について偏光による測定を行ない、相転移における構造変化を解析済みの結晶構造と対応させて、詳細な知見を得る予定である。
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