新しい可能性を持った溶媒として最近とみに注目を集めている超臨界流体の光散乱実験を試みることが本研究の目的であった。超臨界状態は高圧で実現するため、高圧実験の困難さと、わずかな温度・圧力で状態が大きく変わるため、試料の温度・圧力を、正確にコントロールしなければならないという難しさがある。ガラス製の光散乱用超臨界流体用試料ホルダーを試作した。光散乱の角度依存性を測定できるように、円筒形のガラス管を用い、温度・圧力をモニターする測定端子を試料中に直接封入できる形とした。この試料ホルダーの使用可能な温度範囲は0〜100℃、圧力は、10MPaまでである。ガラス製のため、圧力の上限が10MPaであるが、超臨界流体として最も研究され、実用的に利用されている二酸化炭素をはじめとして、トリフルオロメタンやエチレン、キセノンなどの超臨界状態の光散乱実験が可能になった。 二酸化炭素を試料として、プレリミナリーな静的光散乱実験を試みた。温度制御など、まだ十分な精度は得られていないが、超臨界流体の物性の特質を最もよく表す「密度ゆらぎ」を反映した物理量を得ることができる実験法であることを確認した。本研究と並行して行っているX線小角散乱実験では、密度ゆらぎの等高線を相図上に描いた場合、気液曲線に沿って尾根を形成しており、この尾根線が臨界等密度線とは、わずかにずれており、物質依存性がないことを見出している。可視光とX線というプローブのちがいによるゆらぎに違いが現れるかどうか今後の課題である。
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