軽炭素C-12とは異なり、重炭素C-13は、その核磁気モーメントを通じてラジカル内の不対電子と相互作用をもつ。炭素中心ビラジカルを反応中間体とする系では、反応速度や反応収量に対して外部磁場効果と重炭素磁気同位体効果が期待される。実際に、同位体純度が99%の重炭素標識体と天然組成体について、ビラジカル中間対の消失速度と最終生成物収量に対する外部磁場効果を検出し、スピン格子緩和速度から超微細相互作用の大きさを見積もった。 4-ニトロー1-ナフトキシ基とアニリノ基を12個のメチレン鎖により連結させた鎖状分子の光酸化還元において、かご内生成物と散逸生成物の収量に対して磁気同位体効果を検討した。また、7-ニトロー2-フルオレニルオキシ基とアニリノ基を連結させた鎖状分子を用い、同様に検討を加えた。キサントンカルボン酸(XO)とキサンテンカルボン酸(XH)をメチレン基12個で連結した化合物については、ビラジカル中間体の寿命に対して重炭素磁気同位体効果を研究した。アニリノ窒素と直結するメチレン基とXOのカルボニル基に重炭素置換を行った。反応収量に対する磁気同位体効果は定常光照射実験により評価し、ピラジカル寿命に対する磁気同位体効果はナノ秒レーザー閃光光分解法により測定した。アニリノ窒素に隣接するメチレン基が脱水素酸化を受け、アニリノアルキルラジカルとなるので、この部位を重炭素により標識した化合物を用いると、明確な磁気同位体効果が観測された。XO-XH連結体の分子内水素引き抜きにより生じるビラジカル中間体の寿命は、重炭素標識により約半分にまで減少した。以上は、異方的な超微細相互作用に基づくスピン格子緩和により説明できた。
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