申請者はキ-ル大学(1996年4月〜9月)およびNIST(10月〜12月)に滞在し、低周波数領域自動掃引FTマイクロ波分光器試作のための多数の有益な資料の提供をうけた。また同所において最新の自動掃引分光器を実際に使用した経験をふまえ、本研究費により既存の真空容器を改造した新たにマイクロ波空洞を製作することとした。空洞は2枚の凹面鏡(Al製、直径500mm)により構成され、1枚は真空容器の現フランジの位置に固定し、その鏡の外側より直接試料ならびにマイクロ波を導入できる設計である。ノズル位置の変更などにより感度及び操作性の向上が期待される。現在、設計が完了し可動鏡のための直動モーター等を調達した段階にある。 一方、周波数自動掃引機構についてはキ-ル大学2号機およびNIST3号機の回路を参考に必要な電子部品(プログラマブルマイクロ波減衰器、SPDTスイッチ、低ノイズミキサ-など)を購入した。現在それら部品を既存分光器へ組み込み、テスト中である。掃引プログラムは主にNIST(Leonov & Zuban、Grabow作成)を参考に書き換え中である。 我々は本分光器により比較的サイズの大きい分子の分光を目指している。申請者は本年度固体のビフェニルエーテル、4-フルオロビフェニルなどの大きな分子の帰属に成功しており、目的の生化学的分子(さらに水との錯体をも含む)の分光の可能性が増したと考えている。 次年度前期には凹面鏡を製作(学外業者に発注)する予定である。
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