比較的大きな分子(A=1000MHz以下)の高分解能分光を行うため、低周波領域(4GHz以下)において高感度を有するフーリエ変換マイクロ波分光器を試作することが研究の目的である。 既存の分光器(2枚の350φミラーにより構成)を2段階に分けて改造した。第一にGrabow(キ-ル大学)およびのLovas(NIST)等の助言に従い、分子流の方向をマイクロ波パルスの伝播方向に一致させ、感度および分解能を向上させた。その成果の一つとして2-クロロフェノールの塩素核のhfsの解析より、核四極子結合定数の非対角項を決定した。(日化第74春年会) 第二は高沸点液体ないし固体試料の測定を容易にするため、真空容器に直接ミラーを取り付ける事である。この直結方式の設計製作は、当初申請者のキ-ル大学およびNISTにおける同型器の使用経験をもとに取り掛かった。しかし本来目的の大型ミラー(約550φ)の装着について検討したところ、大幅な修正が必要となり、真空容器のフランジにシリンダー型の周波数同調機構を取り付ける事にした。この方式は手持ちのYAGレザーによる固体試料の加熱が容易になるとともに、ミラーの位置決めが外部より可能となり周波数自動掃引が簡便になる事が期待できる。 大幅な設計変更により製作はやや遅れ、平成10年2月末現在50点におよぶ部品が出来上がり、組み立てているところである。またフランジ吊り上げ時の安全のために真空容器周辺にウインチ等を製作組み立てた。この装置は大型ミラーへの改造の準備段階でもある。自動掃引機構のための部品は、次年度校費により購入が決定しているマイクロ波アンプを除きすべて調達できた。 測定を予定している分子は生化学関連物質(カテコール、安息香酸など)と水との水素結合錯体である。既存分光器で測定を試みているが現在のところ遷移は観測されていない。
|