比較的大型分子(A=1000MHz以下)の高分解能分光を行うため、低周波数領域(4GHz以下)において高感度を有する分子流型フーリエ変換マイクロ波分光器を試作することが目的である。第一段階としてGrabow(Kiel大)Lovas(NIST)等の助言に従い分子流の方向をマイクロ波パルスの伝搬方向に一致させ、感度および分解能を向上させた。その成果の一つとして2-クロロフェノールの塩素の核四極子結合定数を決定した。(日化第74春年会) 第二段階は直径550mmの凹面鏡ミラーによるファブリーペロー空洞の構築である。ミラーを直接真空容器のフランジに取付け、シリンダー型の周波数同調機構を採用した。ミラー背部が外部に接しているため固体試料の加熱等が容易になった。しかし数種類の試作品を検討した結果、2枚のミラーの中心軸合わせおよび周波数同調機構がスムーズに動かないことが問題となり、現在、以下の仕様の分光器を設計・製作中である。 (1)既存真空容器の外部に精密レールを敷設し、容器の両側のフランジを正確に平行にそのレールに取付ける。(2)両側フランジに直径550mm凹面鏡を改良シリンダー型機構にて取付ける。(3)フランジと容器本体は特殊な真空保持機構を採用し軸合わせを用意にする。(4)大型ミラー製作のための冶具を考案し、今回は予算的に入手できなかったが、安価に自作できる目途がついた。 一方自動掃引機構については購入部品により回路を構成し、掃引プログラムの移植を進めている段階である。 我々は生物化学関連分子と水(複数)との水素結合錯体の構造決定を目標としている。具体的には安息香酸〜水、カテコール〜水などの錯体の測定を既存分光器で試みているが現在のところ遷移は観測されていない。これら固体試料の気化方法の工夫が、レーザーアブレーションを含め今後の課題である。
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